2021年02月28日

4039話 夜中のピチャピチャ


 ピチャピチャと音がする。夜中だ。目を覚ましたとき、それが聞こえた。雨でも降っているのだろうか。しかし、いつもの雨音ではない。猫が水を飲んでいるときの音に近い。
 庭に猫が来ているのだろうか。ガラス戸一枚の距離なので二メートルも離れていないだろう。しかし庭には水はない。金魚を飼っていた頃の水槽があったが、捨てている。
 では、やはり雨音だろうか。起きたついでにトイレに立ち、その小窓から外を見るが、雨の降っている気配はない。音もしない。窓からの見晴らしはよくない。全部開けていないため。ほんの五センチほどの隙間。角度を変えると電柱が見え、外灯が見える。雨なら、そこに線が走っているはず。
 そこまで調べなくても雨は降っていないことはもう分かった。
 そして寝床に戻ると、まだピチャピチャと音がする。やはり庭が臭い。
 里中はカーテンを開け、ガラス戸を開けた。当然寝床の明かりは点いている。それで庭を照らすだろう。夏の日は開け放しているので、部屋の明かりで庭のほとんどは見えることは分かっている。狭い庭だが、手入れしていないので荒れ放題。だから猫がたまに入り込む。猫の寝息が聞こえてくることもあった。
 だから、猫だろうと思い、庭を見るが、それらしい物はいない。やはり薄暗いので、いても分からないのかもしれない。
 それ以前に水はないはず。しかし、水が溜まりそうなものが庭にあるのかもしれない。植木鉢とか水溜まりとか。
 しかし、この数日、雨は降っていない。
 だが、意外なことに気付いた。庭を見ているとき、ピチャピチャの音がしないのだ。
 ガラス戸を開けたとき、さっと猫が逃げたのかもしれない。
 もう猫探しはやめて、里中は蒲団に入った。余計な好奇心で、別に害があるわけでもなく、ピチャピチャが五月蠅いわけでもない。
 そして蒲団に入り、寝入ろうとしたとき、また、ピチャピチャと音が聞こえだした。
 どれだけ水を飲んでいるのだ。まだ足りないのか。すると水飲み猫ではないのかもしれない。
 翌朝、庭を見たが水飲み場になるような物はやはりなかった。
 その夜、一度も起きなかったので、夜中にピチャピチャと音がしていても、分からなかった。
 その後も、夜中に起きることはあったが、ピチャピチャという音は一度も聞こえなかった。
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 12:59| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする