2024年07月18日

5270 何かが来る


 何かが来ている。何かが来る。藤原は直感した。しかし具体的なものは何もないし、思い当たるものもない。しかし何かが起こる。来ると言う迫り方。
 そこまでは感じている。その感じから頭の中を回転させ、それに該当するものを探したが、そんなものは自然現象ぐらい。大災害なら突然やってくる。
 だが、それではない。来ているのだ。何かが来ているという感じはそれではないし、自然現象とは少し違うように感じられる。もう少し小さく、そして藤原だけに関係することか、その周辺程度に起こること。これは直感で分かる。その範囲も。
 さらに、その直感から、日常の中で起こるようだ。そこまで直感で分かるものかと思うのだが、そう感じたのだから仕方がない。
 さらに何かが近づいてくると言う感じは、徐々にで急激ではない。だが、近づいて来ているのだが、それが分からない場合もあるはず。その場合はいきなり来たとなる。
 日常の中で何かが忍び寄ってくる。その条件に合うようなのを藤原は探すが、思い当たらない。そして思い当たらないものが来ると言うところが何となく勘で分かる。
 何かは分からないが、藤原が出した答えとは違うと言うことだけは分かる。それではない。これではないと。それなら何だと言うことまでは浮かばない。直感でも。
 さらにそれがいつなのかも分からない。今日なのか、数時間後なのか。数分なのか。あるいは来週か。来月か、来年か。
 来年はないだろうとさすがに藤原は考える。直感したことも一年後には忘れているだろう。
 では何なのだ。
 そして一日を終えようとしていた。今日ではなかったことは確かだが、かなり用心して過ごした。ずっと身構えていたようなもの。
 別にこれと言うことも起こらず、昨日と似たような一日だった。天気が少し違うだけで雨が降りそうな空。違いといえばその程度。夕食で食べたものも違うが。
 そういう日常の中、暮らしの中に、それがスッと現れるはず。直感ではそうなっている。
 直感を藤原が弄ったわけではないが、何か得体のしれないものが現れるというポイントに絞ってきた。何かの現象とか異変とかではなく。人に近いものが訪れるような。何かが起こる。それは人による災いかもしれない。
 これは藤原の最初に受けた直感とは変わっている。解釈を広げたものを入れたためだ。これは直感ではなくただの想像。
 そして、日が変わる零時前、チャイムが鳴った。
 これだな。戸藤原は覚悟を決め、ドアを開けた。
 
   了
posted by 川崎ゆきお at 12:26| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする