2024年08月01日

5283 一線越え


 予測が当たることがある。おそらくこうなっておれば良いだろう程度で、その線を越えてくれると有り難い。その線はさほど高くはないが、それ以上を望むと期待外れになる。
 そのある線とは境界線を越えているかどうかで、これは簡単に越えられるもので、それほど難しい問題ではないし、問題になるような一線越えではない。
 ただ、この一線、曖昧なことがあり、越えているのかいないのかがはっきりとしないことがある。見た目は越えているのだが、本当は違っていたりする。
 越えていない状態で越えているように見せているだけ。だから確たる証拠が欲しいところ。その一端でも分かれば正真正銘の一線越え。
 ただし、これは珍しいことではないのだがものによっては越えたことが凄いことだと言える場合もある。
 高梨はその情報なり噂なりを探していたのだが、実際のものを見た人の話はまだ聞かないまま。だから勝手な想像をしている状態が長かった。
 これは過去からの流れから推定する。その中には一線を越えたであろうという話も伝えられている。その証拠はないが、状況証拠。間接的な証拠があるので、おそらくそうだろうという感じ。しかし、曖昧。そして越えて欲しいという希望や期待もあるので、そうだろうと信じるしかない。
 ただ、もっと以前の情報によると、これは越えているように見せているだろうというのもある。だから今回もそれがある可能性もある。
 しかし、その前は越えたであろうということが前提となっていた。そういう話を前回高梨は聞いたので、もう一線越えが普通になっているものと思っていた。
 そして今回はどうだろうと、噂を待ったが、なかなか聞こえてこない。
 まるで口を閉じたように。触れるのを控えるかのように。ただ、それはすぐに分かったのだが、噂になるのが遅かっただけで、特に事情はなかった。
 そして、その噂によると、一線を越えたかどうかは今回は推測ではなく、見れば分かるとなっていた。
 高梨は心配した。越えたことがはっきりと分かることになるはずなのだが、やはり越えていなかったということも分かる。
 一線を越えたような見せ方をしていたことが分かるのか、本当に越えていた証拠のようなもので分かるのか、どちらかだ。
 当然高梨は証拠ありを期待している。何処が証拠になったのか、そこが知りたい。
 しかし、高梨はしばらくの間、それが気になり、ずっと想像だけだったが、どうやら期待通りになっていることが分かった。しかし、それも噂から得た話なので、本当のところは分からないが、何とかそれで収まったような感じだ。
 一線を確実に越えていたとなると、その後の展開を想像すると、これは一線越えをさらに越えたところまで行くはず。つまり先々、まだ期待できるということだ。
 高梨が知る限り、そういう例は珍しい。勢いが徐々に落ちていくことが多いのだ。そのため新たな展開が望めないので、そのうち飽きてくる。そして離れる。
 目先を変えて誤魔化しても、本質的なところが伸びていないと、下降に近くなる。
 ただ、そういうのを見ながら、高梨自身はどうなのかと、考えてしまった。
 
   了
posted by 川崎ゆきお at 12:29| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする